あまりにも、率直な人。
一枚の風信子76
京言葉のように、奥歯にものの挟まったような言い方も苦手だが、かといって何でも思いつくまま、勝手気ままにしゃべられたら、それはそれでどうかと思う。
芸術家の友人がいた。東京生まれ東京育ちの彼は、芸術家にしては穏やかで人あたりもよく付き合いやすい人だった。ただひとつの難点は、率直すぎること。言葉に歯に衣を着せないのだ。或る年の暮れに、正月はひとりで過ごすと聞いて、わが家の手づくりおせち料理を贈ったあとの言葉がかなりのインパクト。「あんた、料理の免許持っているんだよね。それにしちゃ、料理上手くないね」。曲りなりにも40年間料理をつくってきて、面と向かって「まずい」と言われたのは初めてだった。これまでは、ほめられはしても、けなされたことはなかった。例えお世辞混じりでも、お店を出したらと勧められたことも何回かあった。
傷付いたのは、料理の腕だけではない。ひとりきりの正月を送る友のために、おせち料理をつくった私の気持ちだ。思いが通じなかった。それだけは、ずっと後まで尾をひいて、二人の間に垣根を築いていった。
言葉は、時に恐ろしいほどの力を持つことがある。だから、使いかたをおろそかにしてはいけないと思った。
或る友人に不評だったわが家のおせち料理を、一枚パチリ。
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