0905ashiのブログ

毎回オリジナル写真を一枚掲載し、それにまつわる自分の思いやエピソードを書き記します。写真版絵日記のようなものです。

母は、ただ待ち続けた。

一枚の風信子70


写真の「桔梗」は、一生涯、恋人を待ち続けた若い娘がいたという物語にちなんで、「永遠の愛」「誠実」という花言葉がつけられたという。


男は、みんなエディプスだと思っている。私も、典型的なマザコンだった。幼い頃から、父は加害者、母は被害者という図式が定まっていた。外では借りてきた借りてきた猫のようにおとなしいが、家庭内ではそのハケ口として絶対君主として君臨し、家族を自分の思うままに操ろうとした男の妻になった悲劇を、何度も何度も聞かされたことか。「あんたたちがいたから、別れられなかった」と言われても、ただ黙って聞いていることしかできなかった。つれあいの非道をなじる言葉が尽きると、つぎは私への賛辞に移り代わって、彼女の将来の幸せを請われた。小学校5~6年から、ずっと。彼女の夢は、優しいお嫁さんをもらった私と同居することだったと思う。私も、そのつもりになっていた。
呪縛から逃がれられたのは、大学に入ってからだった。社会科学という学問が、家族のつながりよりも、個人の自立の大切さを教えてくれたのだ。できれば、「母さん、オレは親父の代わりはできないよ」と言いたかった。私にできたのは、経済的な援助とときたま訪れることだけだった。彼女はやがてつれあいを失い、痴呆症を発症し、特養ホームでその生涯を閉じた。
「ずっと待ち続けた、あなたの人生は何だったのか」と、今でも思う。


かあさんへ ashi


「うちの庭にも咲いていたっけ、こんな花」を一枚パチリ。