過ぎ去りし時よ、日々よ。
一枚の風信子61
初恋。私の場合は、中学3年の時だった。
友人宅を訪ねた折に、その妹にひと目ぼれした。黒い瞳のきれいな少女だった。ポニーテイルの髪に、触れてみたかったのを憶えている。インスタントコーヒーを初めて飲んだのもここだったし、コリーというアメリカの大型愛玩犬を室内で飼っているのを見たのもここだった。単身赴任の父親はいなくても、友人の家族はとても仲がよく、母と娘は姉妹のようなフランクな話し方をした。まるで、テレビで見るアメリカのホームドラマの世界だった。以来、私の青春は、ずっとそこにあった。バレーをしていた彼女を教室に送って行くバスの中で、そっと肩を寄せて触れてみた。それだけで、うれしかった。
わが家に招いたある日、帰りに駅近くの川の土手に彼女を誘った。暮れなずむ水景色を見ながら、「いいところね」とつぶやくように彼女は言った。
あれから、半世紀の月日が流れた。
西国立に居を定め、写真のように澄み渡るハケの細流を眼のあたりにして、「この水が、あの日のあの川に合流するんだな」と思いをはせた。もしも、時を呼びもどすことができるなら、彼女とここを歩いてみたいとも…。
「願わくば コリーを連れに 散歩道」の一枚をパチリ。
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