0905ashiのブログ

毎回オリジナル写真を一枚掲載し、それにまつわる自分の思いやエピソードを書き記します。写真版絵日記のようなものです。

青木ケ原の樹海? いいえ、東京の高尾です。

一枚の風信子40


ハイキングをしていると、いろんな景色に出会う。尾根沿いから眼下に開けた水と緑のハーモニーに感嘆したり、沢の小魚や名も知らぬ小さな花に心惹かれたり、陽ざしを柔らかく抱きとめる巨木の木陰でまどろんだり…。たいがいの場合は、気持ちをリフレッシュしてくれるものだが、写真のここは違っていた。
「東京のハイキング銀座」と呼びたいほどのにぎわいを見せる「高尾山」。南浅川沿いの旧甲州街道を挟んで、すぐお隣に「裏高尾」と呼ばれる尾根道のハイキングコースがある。その途中で出くわしたのが、この景色。ひと言でいうと、「寂しい」。真夏の昼間なのに妙に涼しい。それでいて、この一帯だけ風がない。空気がよどんでいる感じで、シーンと静まり返っている。鳥の鳴き声もしないし、虫も見かけない。生き物の気配を感じないのである。道に迷ったわけではない。根がむき出しになっている中央部が道なのだ。
昔、箱根で渓流釣りをしていた時にも同じような経験をした。その時も真夏だった。杉林に入ると、セミの声が突然聞こえなくなり、妙な静けさにゾッとしたことを憶えている。


「生きているものに囲まれているから、人は生きてゆけるんだ」としみじみ思った。


「東京の奇妙な風景」を、一枚パチリ。