0905ashiのブログ

毎回オリジナル写真を一枚掲載し、それにまつわる自分の思いやエピソードを書き記します。写真版絵日記のようなものです。

蛙の父さんに、ひとつの花輪も届かなかった。

一枚の風信子28


ある日子どもの蛙が、家に帰ってきてお父さん蛙に「でっかい牛を見た」と言う。父さん蛙は、「このくらい?」と体をふくらませてゆく。すると子どもは「ちがうよ。もっと大きいよ」と言い、その度にお父さん蛙は体を膨らませて、最後は破裂して死んでしまう。


この愚かな「蛙の父さん」の話を聞くと、内弁慶のかたまりで身の程知らずだった父親を思い出す。毎日毎晩、家族の前で自分自身を誇大に飾りたてて恥じなかった彼の口癖は、「俺が死んだら、駅まで花輪が続く」(駅までは2km)だった。彼の葬儀のその日、花輪はひとつも届かなかった。


写真の貝は、義兄の最後の誘いで九十九里を訪れた時に拾ったもの。突起があるけれど「法螺貝」に似た色・形の美しさに惹かれた。そのひと月後に、彼は亡くなった。ホラなど無縁の真摯な人だった。葬儀には会社の同僚・上司・後輩など200名近くの方たちが列を成し、故人の死を惜しんだ。


無視される者と敬われる人の差を、死が教えてくれた。


故人の冥福を祈りつつ、一枚パチリ。