同じうま味を何乗したって、美味しくはならない。
一枚の風信子216
土曜の夕方、日テレの料理番組を見ていて思った。
「うまい!」をやたらに連発する、あの宮川大輔がMCをやっている番組だ。その回は、宮城県在住の業者が出ていて、オリジナル開発の牡蠣ソースを紹介していた。簡単なウンチクを語った後に、いよいよ主役の料理登場。どんな美味しいものができるのかと期待していたが、出てきたのは、なんと「牡蠣の牡蠣ソース炒め」。あのね、こういうのを「贔屓の引き倒し」と言う。シャレにもなんない。例えば、「チーズのミルクかけ」「フォアグラのフォアグラソース和え」みたいなもの。料理に、同一素材は二つも要らない。主役は独りでいい。それに、素材そのものが強烈な個性を持っているのだから、副材はあっさり系のものを選んだ方が味覚がアップする。牡蠣の土手鍋なんて、その最たるもの。豆腐、こんにゃく、白菜、ネギ…みんな控えめで、主役を引きたてる素材ばかりだ。
その辺のところのさじ加減ができなければ、料理は輝きを失い、味気ないものになってしまう。「美味しいでしょ、美味しいでしょ」とたたみかけられたら、美味しいものでも美味しく感じられなくなってしまうことを知っておくべきだと思う。
牡蠣ソースを隠し味に使った中華丼を、一枚パチリ。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。