0905ashiのブログ

毎回オリジナル写真を一枚掲載し、それにまつわる自分の思いやエピソードを書き記します。写真版絵日記のようなものです。

冷凍食卓。

一枚の風信子154



老人病院に、副調理師として勤めていたことがある。チーフと管理栄養士以外はただのまかないと同じで、なんでもやらされたが、いちばん驚いたのが食そのもの。出されるものすべてが冷凍食なのだ。調理と言ったって、解凍、切りそろえるだけ。あとは電子レンジでチン。味付けが必要なものは、チーフがすべてする。見た目だけは立派だけど、人の食べ物とは思えないほどまずかった。病院食全体を、一括して企業が下請けしているからである。安全第一は当たり前としても、利益を追求するから生(なま)なんて考えもしない。できるものは、まるで工業規格品のような味気なさ。これじゃ、治る病人も治らなくなると思うね。
一般家庭にも、冷凍食は広まっている。昔、冷凍品を絶対に置かない魚屋があったが、今そんなことをしたら、とても店は成り立たないだろう。ハムやそソーセージ・ベーコンなどの加工食ですら、冷凍出荷がふつうと聞く。フライパンで炒めると、油のハネがすごいからすぐわかる。暮れになって、おせち料理のことが頭にちらつくようになると、いつも野菜類の値上がりが始まる。カミさんに「安いうちに買って冷凍しとけば?」と言われて、「ウーン」とうなってしまった。肉も魚も、そして野菜まで生で食べられなくなるのかーー。濃くと深みのある料理が、食卓から消える日も近い。


氷りつくお皿を、一枚パチリ。