0905ashiのブログ

毎回オリジナル写真を一枚掲載し、それにまつわる自分の思いやエピソードを書き記します。写真版絵日記のようなものです。

あまりに熱いクライマックス、あまりに切ない結末。

一枚の風信子94



「裁きを待つ女」(デイヴィッド・クレイ著)。
この本は、ハードボイルドの極みとも言えるもので、甘ったるいところがまるでない。酒に例えるなら、辛口のバーボン。芳醇なワインを好まれる方にはお薦めできない。あのフィリップ・マーロウの向こうを張って、「強くなければ生きてゆけない。強く(優しくではなく)なければ生きている価値がない」という主張が全編を貫いているようだ。
筆者は「愛情の物語だ」と冒頭で言っているが、私は「愛情をとるか、友情をとるかの二者択一物語だ」と思う。酒とドラッグに溺れた弁護士の再生を縦糸に、夫を射殺した被疑者を横糸にして織り成すストーリー展開は、行間に緊迫感を漂わせ、勝つためには手段を選ばない駆け引きとスリリングな法廷闘争は、読者を惹きつけて放さないだろう。
「起承転結」がはっきり付けられた本で、「起」の部分がやや長く、読者によってはまだるっこく感じるかもしれないが、第2部の始まる「承」のところからは一気に緊張感が高まり、「転」では予想もしなかった大爆発を起こしてみせる。さらに、意表をつかれた「結」の哀しさには、思わずため息が出たね。
「マルタの鷹」や「ロング・グッバイ」の威光がかすんで見える、第一級のハードボイルド・サスペンスだと思う。


「図書館に1冊だけしかない著者の本」を惜しんで、一枚パチリ。